発勁について

今回は発勁について科学的遊戯(SF)してみたいと思います。発頸とは創作物において中国拳法を使う人が使うオカルトチックで強力な打撃の総称です。


目次
1.発頸とはなにか?
2.現代格闘技及び武術と発頸
3.日本武道と発頸


1.発頸とはなにか?
 大別すると以下の3つが一般的なイメージです。
A。原理がわからないが超強力なオカルト打撃
B。寸頸・・・短い距離で普通の打撃と同じ効果は発揮する打法
C。浸透頸・・・ガードや防具を無視して内部にダメージを与える打法

 おのおのについて解説するまえに物理と身体の原理について書きたいと思います。
 人間が出せる最大打撃力は自身の体重と筋肉より発生する力が上限値です。しかしながら、この上限値に達する事は不可能です。
 というのも人間の体は弾性体できており動力伝達においてのロスが非常に大きいためです。足首、手首、地面と接する足の裏・・・力の逃げる箇所は多数存在します。
 体の弾性を利用して打撃力を増大させるという理論もありますが、あくまで最大値を大きくするのみでエネルギーの総和が変わるわけではありません。もちろん10のエネルギーを10の時間で伝えるのと5の時間で伝えるのでは5の時間の方が効果的かはいうまでもない事です。

A。原理がわからないが超強力なオカルト打撃
いわゆる触れただけで相手が倒れたとか吹っ飛んだとか、気を打撃にのせるとかいう物です。
残念ながらそんな物は存在しません。。あくまで創作物の中だけでの話しです。ただ、創作物の中では理論的な整合性は取れていると思っています。物理法則が現実世界とは違い謎エネルギーを打撃に上乗せできるのですから・・・ 現実世界で科学的根拠に基づくこのような話は聞いた事はないし、そういったそういった実証例を試合で見た事もありません。
しかしながら、自身の技量と相手の技量に著しい差がある場合はオカルトチックにダメージを受ける事があります。それは自身視点から見るからであり、同レベルの技量を持つ人達の間では発生しません。


余談ですが合気道における合気とは上記とは別物です。合気とは乱暴に言えば相手の意思に自分の意思を同調させて相手を制御する技です。もっとシンプルに言えば相手の動きを知覚する手法と言ってもよいです。
SF的に書けば昔の日本には物理学における、力や速度を伴い方向性を持った力であるベクトルという概念がなかったため、目に見えない力の流れを合気としたのだと思います。

また、気を流して相手の治療するというのもほとんどがヤラセ、インチキである可能性が高いと思っています。こちらについては完全には否定できないですが、近年トリガーポイント療法という痛む箇所から離れた部分をマッサージすると痛みがとれるという治療法の原理から推測するに別の原理があると推測されます。
近年これの仕組みがわかるというか、一般知されるようになりました。筋肉が無意識に緊張している箇所に手を軽く押し当てて、上手く力をかけると筋肉の緊張が取れるとの事です。つまるところ軽い指圧で内臓の位置を治したらとか、骨盤のゆがみを修正する事は可能との事です。


B。寸頸・・・短い距離で普通の打撃と同じ効果は発揮する打法
 これはブルース・リーワンインチパンチや寸頸割りというように瓦の上に手を置いて割る手法の実証動画が残っており実在する打法です。一見するとオカルトチックですが人体構造を上手く使っての打法で理にかなっています。
 そもそも、熟練者の打つ打撃は余分の動作が極めて少ないのに威力が大きいです。そういった事を体験した事がある人ならこれが実在する事に納得いってもらえると思います。

 しかしながら、一般的なイメージと実情には乖離があります。それはこの打法は打つまでに時間がかかるという事です。たとえばですが拳を相手に押し当てる。肩や体を動かし寸頸ができる体制をつくり打つといった感じです。
 そんな事をするなら普通に殴った方がいいんじゃない?となってしまうのは自明の理です。
 ちなみに瓦割りでよく寸頸をするのはその方が楽だからです。あたるまでの移動距離が長ければ長いほどトラブルが発生しやすいので、寸頸でわれるならそちらの方がコントロールしやすいです。ひょっとしたらブルースリーワンインチパンチも同じ目的かもしれません。


C。浸透頸・・・ガードや防具を無視して内部にダメージを与える打法
実は私は浸透頸が打てます。そして、100人中100人にその効果を実感させる自信があります。
さて、どのように打つのでしょうか?

 ・・・

 ・・・

 ・・・

膝蹴りです。すみません、怒らないでください。
実際のところ頭、肩、背中、肘、膝などの体に中心部に近い箇所を使った打法なら浸透頸に似た効果を簡単に出すことができます。
ただ、腹部への膝蹴り以外は練習自体が危ないので触れる機会は少ないです。というか遊びでもやらない方がよいです。

腹部へのひげ蹴りでも実戦空手を習いだして3ヶ月も経ってない時の私が防具ごしに2歳上の先輩を悶絶させました。それは防具を着用してもらって行うコンビネーションの練習の時で、先輩曰く膝蹴りにはそういう性質があるとの事です。その後、幾度となく同じ現象を体感、目撃しました。

膝、肘などを使った打撃のエネルギーの伝達は突きや蹴りとは隔絶しています。膝蹴りは私の前歯を一撃でおったり、ほほ骨にあたったにもかかわらず激しい脳震盪を発生させ私を検査入院させました。
 そのひげ蹴りは片方の手で引っ張りながら行う、引っ掛けという手法からだされてのですが・・・私の事件の後は私が習っていた流派ではしばらく禁止になりました。

この文章を読んだ人の中には試してみたくなる人もいると思いますが必ず、ミットや防具ごしでの腹部への膝蹴りのみ留めてください。運が悪い場合は死亡につながる重大な事故を引き起こします。
ちなみに最強の浸透頸は相手を地面に寝かしての肘打ちであると思っています。


2.現代格闘技及び武術と発頸
A。原理がわからないが超強力なオカルト打撃
B。寸頸・・・短い距離で普通の打撃と同じ効果は発揮する打法
C。浸透頸・・・ガードや防具を無視して内部にダメージを与える打法
 1.にてこの3つについて書きましたが現代の格闘技、武術の試合でこれらを見ることはまずありません。そちらについて書きたいと思います。

Aについて、そもそも存在しないので見ることができないと思います。
Bについてですがこれは1。で書いた内容とかぶるのですが予備動作が大きいため普通に殴った方がよい。もしくは技のでかかりが潰されるといったところです。
中国拳法との異種交流戦が一時期よく行われていましたが、寸頸が使われたという話は現時点では聞いていません。逆にムエタイ対中国拳法でムエタイの肘打ちが猛威を振るい死人まででたという噂は聞いた事があります。

CについてもBと同じです。わざわざ中国拳法式の浸透頸を覚えなくても肘や膝で事が足りますのでそちらを使うでしょう。むしろ肘や膝を極めた方が浸透頸よりも威力があるかもしれません。
扱いが難しいのが頭と肩を使った打撃です。これについは八極拳というものがバーチャーファイターというゲームの影響で有名で、一時期、型や打法が紹介されていましたが理にかなっていたと思います。

ただ、これらの打撃をルールの中に取り入れたケースはごく限られています。相撲は頭突きを使いますが決まり手ではなく土俵の外に押し出すための手段です。
相撲最強論はよくネットで行われる論争です。頭突きはその根拠の1つとなるくらいの大きな要因です。
3.日本武道と発頸に繋がるのですが投げ技との相性が悪いうえに威力がありすぎて使い方が限定されるためではないかと思っています。



3.日本武道と発頸
中国拳法には天敵がいます。それは日本武道です。
中国拳法の理は日本武道に当てはめるとほとんどが否定されます。そして、発頸はその代表格です。

なぜなのでしょうか?
日本武道の中心的存在である柔道の投げと浸透頸を比較してみたいと思います。

浸透頸の理論的な最大エネルギーは自信の体重と筋力からエネルギーとなります。
投げ技はどうでしょうか、上記に相手の体重の力が加わります。

体の中心部を使った浸透頸の威力は突きや蹴りとは隔絶した威力があるとかきましたが、投げはさらに威力が上です。その威力は肩の骨や鎖骨を破壊するほどです。
創作物のマジカル発勁でも肩の破壊はあまり描写はしません。せいぜいアバラ骨や内蔵が壊れる程度です。打撃を肩でうけて防御する。これは打撃格闘技ではよく使われる防御方法でその防御力はかなり強固な物です。創作とはいいえ、あまりにもやりすぎると説得力がなくなるため防御した肩ごと相手を破壊するという描写は限られた物になります。

投げはその頑強な肩を容易に破壊する威力があるのです。創作ではなく現実で。
柔道ができたころの日本人はバイオレンスでした。今とは比較にならないくらい公にならない試合や道場やぐりがが多かったと思います。武術家は油断すると闇打ちをかけられボコボコにされるため日々、命がけだった事でしょう。
柔道の技術や仕組みはそういった物を跳ね除けて作られたため説得力があります。

そして、投げにはもう1つ利点があります。それは威力の調整を行い易い事です。
肘や膝蹴りですら威力の面で投げと勝負をするのが難しいのに浸透頸など話にならなかった事でしょう。


一応、古流柔術にも通しという名前で浸透頸がありましたが、投げにすっかり駆逐されてしまい、失伝してしまったといってよいと思います。逆に合気道に残っているような技術は有用であったので生き残っています。

余談ですが空手の発祥は琉球であるが日本への伝来の時に多くの技術が伝わらなかったと言われていますが私はちがう見解を持っています。柔道、柔術の技があったがゆえに使えないと判断し取り込まなかったのではないかと思っています。
琉球古武術が再び脚光をあびるにのは柔道と空手が完全に分離した戦後を待つ必要がありました。

でも、琉球古武術に同情してしまいます。日本拳法には波動券という琉球を源流とする技があります。地味な技で相手に手のひらを向けた状態の構えから拳を握りこんで打つ手法です。威力があり有用だった事もあるのですが柔道の技術である掴みと相性がよかったのでしょうね・・・まあようは柔道を頂点とする日本武道に美味しいところを吸い尽くされてしまったというところだと思います。

上記の記事は小生がかつて知恵袋にUPしたものを加筆修正したものです。