正拳の打ち方、学び方についての考察

 今日は空手の話をしたいと思います。

 空手家の武器といえば拳、特に正拳突きは基本中の基本にて最高の武器と言われていますが・・・実際のところ武器になるのか?という疑問もあります。
 そこらあたりをちょっと深いところから書いていきたいと思います。


 まず、打撃の威力ですが運動エネルギーx伝達で決まります。

 ようは運動エネルギーが大きいと威力が上がります。運動エネルギーを生み出す要素としては体重、筋力、スピードです。ここでちょっと分かりにくいのが体重です。
 脂肪で体重が重い人は強いパンチを打てるか?という質問につながるのですが、答えとしては脂肪も重りになるし、筋肉も重りになるで強いパンチを打ちやすいが答えになると思います。

 実際のところ筋肉で体を動かすわけなのですが、筋肉が常に力を発揮して動かしているわけではなく、特定の部位に以外は動いていません。それどころか必要のないところに力が入るとスピードや威力が落ちたりします。詰まるところ筋肉は体を動かすエンジンですがその一方で重りやブレーキにもなります。
 ですので脂肪とはいえ体重がある人の方が強いパンチを打てます。ただ、体に重りをつけて動かすので関節に変な負荷がかかり壊れるというリスクもあります。

 続いて伝達です。これは打撃系の武道、格闘技の永遠のテーマなのですが同じ100のエネルギーがあったとしても人によってそれが20だったり、70だったりします。そして、個人の資質に依存する部分が極めて大きいです。
 特に試合の中で強烈な打撃を打てる人というのは特定の才能を持った人に限られ、その才能がなんなのかは理論後付けでしかわかっていません。


 とはいえ長い人間の闘争の歴史なかで研究が重ねられるなかで二つのアプローチに落ち着いています。
 一つは空手系の腰をしっかりと落とし拳を締めこみながら突く方法。もう一つはボクシングなどのように基本は手打ちで拳はバンテージ、グローブで固めて、当たる瞬間のみ力をいれる、下半身を作る方法。

 試合を行う闘技は試合の結果がすべてです。そのため、拳が壊わさないようにしていかに相手にダメージを与えるかが評価の決め手なります。ですのでどちらかに偏るものの基本的には両方のやり方をやります。

 私がフルコンタクト空手を学んだ時に教えてもらうやり方は押すような形になってもいいから下半身をしっかりつくり、拳を握りこんで打つやり方でした。そして練習方法としては素手にパンチンググローブをつけてのミット、サンドバックへの打ち込みです。もう20年以上も前の事ですが、この教え方自体は間違いではなかったと思っています。
 といいますのも私はキレる突きは打てませんでした。拳を大きなケガをする事なく終える事ができ、相手を崩す突きについてはそれなりにできたからです。

 では、中年になって復帰した時に突きについては真っ先に指摘されたのが切れがなく、押すような突きになっている事です。フルコンタクト空手の技術の流れには極真系と正道系という大きくわけて二つやり方があります。
 まあ、これは実際の練習では流派にこだわらず組み合わされて運用されていますが・・・極真系は完全に試合に傾倒せず、実際に人を殴って倒す事を練習の中にとりいれており試合はそれの確認手段です。正道系は逆に試合にて以下に人を倒すかに重点をおいています。

 私の突きは正道系の突き方でした・・・自身の突きにキレがない事は自覚していたので新規一転し極真系が理想とする突きを学ぼうとしたのですが、なかなか成果がでませんでした。

 余談ですが極真系からみると正道系はキックボクシング、ボクシングもどきで武道ではない、正道系からみると極真系は試合で使えない無駄事ばかりやっていてスポーツとしてはよくない、という評価もあります。実は両方共も正解で成果や評価の基準が違うなら、こういった見解になる事は間違ってはいません。
 さてさて、どちらが現実には正解でしょうか?これは後で書きたいと思います。

 閑話休題・・・
 いろいろやっている中で二つの機会によって答えが少し見えてきました。
 今回のブログで最終的に書きたい事はこれです。

 で、二つの機会とは何かというとバンテージを巻く事と木の柱への拳の打ち込みです。
 バンテージを巻いて練習しだしたのは手首を試合で痛めたからです。バンテージを巻くことにより何ができるかというとボクシング式の拳を締めこまずに打つ方法です。
 そして、木の柱への打ち込みですがこれも力をいれると拳の方が確実に壊れます。ですので軽い力で当てて拳を握りこまずに打ち、自分が手が壊れない打ち方を探し、無意識の動作を鍛えていきます。

 もちろん、リスクもあります。拳を締めずに打ちボクシング式の打ち方をバンテージやグローブ無しの補助具なしでやると手首、指、拳頭を痛めやすいです。
 ただ、拳を締めない、握りこまないという事を意識してから自分の突きの質が少し変わったような気がします。

 もう少し練習で起こった事を詳細に書くと
 拳を締めて下半身を作って打つやり方だと人差し指と中指の拳頭の両方を当てる事は比較的容易です。これを拳を締めずに打つと私の場合は中指の拳頭、ばかり当たるという現象が発生しました。まあ、人によってはあたる場所が変わると思います。
 今は拳を締めずに打ち、両方の拳頭を当てれるように無意識の動作を鍛えています。上手くできた時は拳から肘まで貫くような衝撃が発生します。逆に失敗した時は中指の拳頭が痛かったり、手首がまっすぐになりません。

 フルコンタクト空手もボクシングも長い歴史があります。その中で培ってきた鍛錬方法というのは両方とも間違っていないと思います。ただ、人には個体差があり、意識や習得レベルも違います。何系というものにこだわらずどん欲に技術を組み合わせていく事が大事だと思いますが・・・まあ、これって昔から言われていた事なんですよね、ただ、自身に落とし込むと案外と気付かないもんです。


 最後に極真系と正道系の技術のどちらが正しいかについてですが・・・現在のJKJOルールに関しては極真系に分があるかなと思います。といいますのも今のJKJOルールでは試合でグローブをつける事が多いからです。練習の組手もグローブありきです。
 グローブをつけるパンチでダメージを稼ぐとなるとパンチの切れが要求されます。
 そのため極真系の考えの方が理にかなっているのではないかと思います。
 そして、極真系の考えを怪我無く試してみるにはバンテージのみでのミット打ちが有効だと私は思っています。

 とはいえ誤解ないように書いておくと正道系の技術は本家:正道会館とはちょっと違います。純正道系についてはキックボクシングなどの顔面ありの戦いも想定しているからです。そうなるとパンチにキレを付加する技術体系というのは追加されていると思います。
 どういう事かというと正道系の技術とは正道会館石井館長が書いた本の技術がベースとなっており、必ずしも本家とはちがうんですよね。ただ、論理的で効果があり技術公開されている事もあり多くの流派でこれが取り入られましたし、選手が個人的に実施して技術をものしたケースも多く、フルコンタクト空手界に急速に広まりました。

 そして、面白い事にこの本の中で石井館長自身が技術のステージをあげるためには顔面有のルールでの研鑽が必要だと書いています。おそらくですが素手フルコンの試合ルールに適合しすぎたため、欠点もでてきていたのだと思います。

 でわでわ、この辺りで・・・